meg merryの本棚から(1)白いしるし/西加奈子
読書の秋には、ラブレターを添えて本を贈ってみましょう!
meg merryの本棚から、デザイナー・ユウキがこの秋、贈りものにぴったりな本をセレクトしてご紹介させていただきます。
バーでアルバイトしながら絵を描き暮らす主人公・夏目は、友人のカメラマン・瀬田に連れられ足を運んだギャラリーで大きな一枚の絵と出会います。
小さなギャラリーの二階の壁一面にぐるりと貼られた白い紙。
よく見るとそこには、白い絵の具で富士山が描かれていました。
その絵に魅了されたことをきっかけに、夏目はその作者・真島との底の見えない恋に深くのめり込んでいきます。
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ロマンスには程遠い、苦しい恋愛小説です。
ふつうなら「ラブレターを添えて贈りたい」本にはあまりむいていないかもしれません…
しかし自分自身の生活にわずかに劣等感を抱きながらも、自分のものにならない間島と、
そして恋をとめられない自分自身の心と徹底的に向きあい戦う夏目の心を、
幸せな恋愛をしている人にもそうでない人にも感じてもらいたいなと思います。
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この本は1ヶ月ほど前に読んだのですが、読み返すことなくこの感想を書いています。
間島との恋をきっかけに変容していく夏目はそれほど強烈で、
それを猛烈に語る文体が、読み手の心に押し付けられるように深く、刻まれます。
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普段わたしは、ラブレターのあるたのしい生活を提案させていただいていますが、
ラブレターやその他のお手紙を書く行為は、筆を動かすうちに自分が気づいていなかった本心に出会ってしまうことがあります。
ですから、本当はちょっと怖いことなのかもしれません。
いいことに気づくなら幸せですが、そうでない感情に気づいてしまうこともあるかもしれないです。
逃げずに、自分の心のままに恋を求める夏目の姿を通じて、
鏡に姿を映すように、便箋やカードに向き合ってみる時間を持ちたいと思えました。
「白い紙に白い絵の具で描いた富士山の絵」から始まるお話です。
meg merryでも、白い紙に白いインクで活版印刷を施した、メッセージカードを販売しています。
ぜひご覧ください!
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